シングルおやじの気ままな一人旅

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　曇後雨

　
　７時３４分に出発する。１１号線に合流して進むが、車が多いだけで特に見るものもなく淡々と歩いていく。９時７分に１１号線から分岐して旧道に入ったので、これで車の騒音から逃れることが出来ると思って、ホッとしたのだが、この道も信号がないせいか意外に車が多い。旧道なので道幅が狭く、しかも一方通行ではないので、かなり歩きにくかった。
　左手に「岸ノ下地蔵堂」があり、その横に宝暦６年（１７５６）の宝篋印塔、更にその後ろに大きな銀杏の木が２本途中から切られて立っている。銀杏はかなり古い木のようなので、危険防止のために切られたのかもしれない。

　果物屋の前を歩いていると、後ろから来た自転車のおじいさんに呼び止められて、果物をお接待するので、好きなものをとりなさい、と言っていただたい。折角なので遠慮なくみかんを一ついただくと、もう一個、と言われて伊予かんを取ってくれた。更に何かくれそうだったので、イヤ、荷物になるのでこれで十分です。お心のみいただかせて頂きますといって、みかんを２個有り難くいただいた。「気を付けてがんばれよ！」という声が暖かく心に浸み込んできた。ありがとうございます。歩いていると、「頑張ってください」「ご苦労様」と声をかけてくれる方、何も言わないが、笑顔で目礼してくれる方、夫々なのだが、皆さん、歩き遍路に対して優しい。四国の大きな特徴であり、歩いていてとてもうれしく、力づけられる。
　右手に「坂ノ下大師堂」があり、その横に大きな観音様が立っている。１１時８分にここを通る。

　その先、１１号線に出たところに店があったので、昼にはまだ少し時間があったが、昼食にする。これは大正解で、その後道沿いに食事をするところは全くなかった。
　その先で一旦旧道に入るが、すぐ先で１１号線に合流、更にその先で再び旧道に入ると、急に静かな道になる。関川に架かる熊谷橋を渡るが、この川は水がきれいだ。橋を渡るとすぐ先、左手に「熊谷地蔵尊」がある。

　紅梅が咲いている。なかなかきれいだ。日頃はこういった草花にはあまり関心がない私なのだが、こうして歩いていると、すんなり目に入ってきて、きれいだなぁという気持ちになる。旅はこんな私でも詩人にするのかな？

　左手に木ノ川集会所があり、その横に「三度栗地蔵院」と三界万霊ほかの石仏が集められている。
昔、弘法大師がこの地を通りかかったとき、子供達から栗を一つもらったお礼に、「今より、一年に三回の実を与えん」と言い去り、以後この一帯の栗の木は年に三回実を結ぶようになったという。

　１３時２９分に「延命寺」に着く。ここは奈良時代に四国を巡錫中の行基が開創したと伝えられ、平安時代前期、弘法大師がこの地に松を植えた。その後、この松の下で足の不自由な人を見たので、弘法大師は千枚通し霊符を創札し、霊符を一枚水に浮かべて飲ませると全快した。治癒してもらったこの人物はこれに感銘し、弘法大師より得度を受けて法忍と名乗り、この地で千枚通しの霊符を継承したという。この松は「土居のいざり松」と呼ばれ、明治時代には枝が傘状に東西30m・南北20mに広がっていたという。しかし昭和４３年に枯死した。現在は枯れた幹だけが横たわっているが、往時を偲ばせる大きな松だ。

　１３時４７分に今日の宿である蔦廼家に到着する。ただ時間が早いので、荷物を置いて一休みした後、１４時６分に出発して先へ進む。左手に「村山神社」がある。ここは県下屈指の式内社で、白鳳３年（６７４）に斉明天皇と天智天皇を合祀したとされるが、天正１３年（１５８５）の兵火によって社殿、旧記等焼失したため、創建年代は不詳という。村山神社の境内は、百済救援のために筑紫に向かった斉明天皇が滞在した娜大津の磐瀬行宮の跡だという。また、70体余りの木像があり、斉明天皇の近侍の像と伝えられる。社殿の前にある「お宝塚」を高貴の方の御陵とする伝承もある。天保１２年（１８４１）や享保１５年（１７３０）といった常夜燈が立っている。

　１５時ごろ雨が降り出した。今日の予報では時々雨になっていたのだが、ここまで降らずに来れたので、もう少し待ってくれと祈ったところ、あまり強い降りにはならず、伊予寒川駅に１５時４０分に着く。祈りが通じたのかな？
　ここから伊予土居駅まで電車で引き返す。
　今日の宿も泊り客は私一人だったが、女将さんは感じのいい方だった。
　

　本日の歩行時間　　　８時間６分。
　本日の歩数＆距離　４８１３５歩、３３㎞。