四国遍路・同行三人を歩く 

2006年06月04日(日) ~2006年07月18日(火)
総歩数:1568725歩 総距離:1020km

2006年06月29日(木)

よしのや~41番龍光寺~42番佛木寺~民宿とうべや

                  歩数:41346歩 移動距離:26.8km

 7時15分出発。間もなく松尾トンネルに入る。このトンネルに入る前に遍路道があるのだが、かなり曲がりくねっている。直進するトンネルと比較すると距離的に長くなりそうなのでトンネルを歩くことにする。全長1710mのこのトンネル、換気もよくスムーズに歩くことができた。トンネルを出たところに遍路さんステーションという休憩所があったので一休みする。そこにパネルが張ってあり、平成16年~18年度で新松尾トンネル工事というものがなされていることを知る。横を見ると山を削ってかなり工事が進んでいる。相当に大規模な工事のようでトンネルの総延長は2031mになるようだ。国道56号線はたしかにそれなりの交通量はあるようだが、かといってそんなに渋滞をしているようにも見えない。専門的なことはわからないが、道路やトンネルも老朽化して危険を感じるようなこともないと思う。国の財政状況が厳しい現在、そんなに急いで建設をしなければならないような工事なのだろうかという疑問がわく。

 11時10分、少し早いが宇和島市街地の喫茶店で昼食にする。宇和島は想像していたよりも大きな街である。市街地に入る前から車は切れ目なく続く。こうなると山の中の静寂さがなつかしい。もっともずっと生活をしていくとなると山の中はちょっとどうかな?時々喧騒、時々静寂、そういう人生をこれから送ることができればいいなと思う。

 龍光寺へ向かう途中で休んでいると一人の歩き遍路の方と会う。声をかけると私を覚えておられて、その方が足摺岬から打ち返しておられる時に、足摺に向かう私と会ったそうだ。私は全く記憶になかった。如何に無の境地で歩いているかということと言えば聞こえがいいが、実は何も考えていない、何も注意を払っていない証拠でなんとも申し訳けない次第である。30分ほど一緒に歩く。京都の方で58歳、登山暦30年ということで装備も登山用のものを持ってこられていた。かなり重そうである。やがてお先にどうぞといわれるので、先に行くことにする。

 14時、41番龍光寺に到着。6時間45分、34611歩。

 龍光寺の納経所にこのお寺の住職と思しきお年寄りのお坊さんが座っていた。掛け軸を差し出すと、
「このような巻き方をしていると八十八回も巻いたり広げたりしなければならない。」
「これを終わったところまで分けて巻いておれば書くほうもすぐに書く場所に行き着くし、また何度も巻いたり広げたりしなくて済むので掛け軸も痛まない」といわれる。
 なるほど確かにそのとおりでこれまで何も考えずに墨が乾けばそのまま再び巻いてしまっていたと反省。
やがて
「そこに張ってある仏様をごらんなさい。」
見ると色々な仏様の絵を描いた紙が張ってある。
「これは全て私が書いたものだ。」
「一枚の紙に沢山の仏様がいて、その真ん中に女の仏様が描かれている絵があるでしょう。」
「よく見てごらん。あなたの奥さんに似ているでしょう。」

まぁ、そういわれればそういう感じもある。

「奥さんを大切にしていますか」
「もう亡くなりました。」
「そうか、生前は大切にしていましたか」
「していたつもりです、いい結婚生活だったと思っています。」
「後添えはもらわないのかな」
「いや、そんなつもりはありません」
「たしかに色々と問題が起きる可能性があるからな」
「いや別にそういうことを心配してのことではないのですが」

このあたりからなにか会話のズレを感じるようになってきた。
おそらくその後の私の受け答えが、日常なされている受け答えと異なっていて、このお坊さんにとって想定外のものだったのだろうと想像するのだが、なんとも妙なことになってしまい、これはだめだと思って早々に退散する。

 このお寺で昨日出合った歩きの方と再び会う。参拝を済ませた後、京都の方も追いついてきて順次三人でお寺の下の饅頭屋さんに入り饅頭とお茶のお接待を受ける。ご夫婦でやっておられるこの饅頭屋さん、とても感じのいい方だった。京都からこられている方がお菓子を作られる職人さんだということであんこの量のことでしばし話が弾んでいた。たしかにこのお店のあんこの量は多かった。

 その後三人それぞれのペースで歩き、15時30分42番佛木寺に着く。41番から50分、4942歩。

 ここを打ち終わって三人とも民宿とうべやに泊まることになる。京都の方は野宿が中心ということで自炊をするため素泊まりだった。500gのお米をスーパーで買い、味噌なども持っておられるということで、荷物は重くて大変だろうと思う。

とうべやのおやじさんの話。
 以前は地質検査の仕事をしていて全国を歩き回られたそうだ。その際、色々な民宿に泊まり、楽しかったので自分もいつかは民宿をしたいと思って始めたということだった。全国でどこが一番よかったですかと尋ねると、ここ(今住んでおられる場所)が一番だよと言われていた。やはりだれしも故郷が一番なのだろう。
 民宿をやっていると、色々なことがあるが、その中でも予約を受けたので準備をして待っていると、もう少し歩けるので先に行きますと言ってくるお客がいたり、何の連絡もなしにキャンセルというケースもあるそうだ。これは他の民宿でもよく聞いたことだ。たしかに歩いていると思わぬ事態に直面することもあり、そのため予定していた宿にいかれないということもあるだろう。しかし予約を入れているのであれば、せめてキャンセルの連絡ぐらいはしなければいけないと思う。
 この民宿には狸がでてくる。以前は夜になると出てきていたのだが、今ではおやじさんが呼ぶと昼間でも出てくるそうだ。夕食が終わって残飯を庭に置き、おやじさんが「こ~い、こい、こい、こい」「こ~い、こい、こい、こい」と呼ぶと出て来た!7匹の狸がえさを食べに来た。最初は注意を払いながら出てきていたが、やがて競って食べだした。食べながらけんかをしている奴もいる。序列があるようで、それにそむくとやっつけられるようだとおやじさん、わしのことを仲間と思っているようだとも言っていた。
絶好のシャッターチャンスだと思ってカメラを取りに行き、電源を入れたとたん、電源切れのメッセージがでた。
 ありゃ~と思ったがどうしようもならない。残念ながら写真を撮ることができませんでした。

旅の地図

記録

プロフィール

かっちゃん
歩人
かっちゃん